こんにちは!
現役ママ薬剤師の安美です。
先日、糖尿病治療薬としてよく使われているメトグルコ錠が自主回収となりました。
薬の自主回収っていうのは、
健康被害が出る恐れがある薬を製薬メーカーが自主的に回収、出荷停止にすること。
メトグルコ錠は、ビグアナイド系経⼝⾎糖降下薬に分類されるメトホルミン製剤で、Ⅱ型糖尿病の治療によく使われています。
毎日飲んでいた薬が急に使えなくなるだけでも不安なのに、
しかも、ガンになるかもしれないの?と心配になる方も多いと思います。
今回は、メトグルコ錠の自主回収について詳しくお話します。
少しでも不安が軽くなるとうれしいです。
糖尿病の薬、メトグルコ錠の自主回収の理由とは?
今回、メトグルコ錠が自主回収になったのは、
NDMA(N-ニトロソジメチルアミン)という発がん性物質が、
⼤⽇本住友製薬株式会社が製造販売したメトグルコ錠250mg及びメトグルコ錠500mg(メトホルミン塩酸塩錠)のPTP包装品の複数のロットから管理指標を超えて含まれていることが判明したためです。
NDMA=N-ニトロソジメチルアミンは環境汚染物質のひとつ。
人に対する発がん可能物質に分類されています。
薬だけでなく、いろいろな産業における製造中に発生したり、飲料水や食品(肉・乳製品・野菜など)にも環境汚染物質として検出されることもあります。
以前、胃薬のラニチジン錠(ザンタック錠)でもNDMAによる自主回収がありました。
大日本住友製薬のメトグルコはいわゆる先発医薬品です。
つまり、大日本住友製薬のシート包装のメトグルコ錠250㎎と500㎎でNDMAが基準を超えたロットと、超えている可能性のあるロットが⾃主回収となったわけですね。
(わざわざPTPシートというのは、錠剤を1錠、1錠、バラバラに容器に入れた製剤もあってそっちは問題ないから)
発がん性物質NDMAが検出された原因は、
薬の錠剤のPTPシートのアルミの印刷インクに含まれる物質が、錠剤の中にごくわずかに残っていた原料(ジメチルアミン)と反応して、NDMAが生成された可能性が考えられているそうです。
現在、NDMA生成の原因と考えられる印刷インク成分をなくした製剤に変更する作業をすすめているとのことです。
ちなみに、メトグルコの後発薬では、
日本ジェネリック株式会社のメトホルミン塩酸塩錠500mgMT「JG」の一部のロットが自主回収となっています。
こちらはPTPシートの500㎎錠のみ自主回収です。
日本ジェネリックのメトホルミン塩酸塩錠250㎎MT「JG」は自主回収の対象ではありません。
後発薬(ジェネリック医薬品)については、後発薬の値段が安いのはなぜ?ジェネリック医薬品で賢く医療費を節約に詳しく書いています。
すでにメトホルミン錠を飲んでいる場合はどうしたらいい?
大日本住友製薬の自主回収に関するレターによると、
「メトグルコ錠のNDMAの管理指標:
メトグルコ錠の1日最大量2250㎎を70年間ずっと続けて飲んだ場合に、10万人に1人に発がんするリスクが増える量」
として設定されているそうです。
メトグルコは、一般的には1日750〜1500mgの用量で飲むことが多く、服用期間も70年間飲み続けるということは考えにくいです。
つまり、実際の患者さんの飲む量や服⽤期間から総合的に考えると、健康上の問題(この場合は、NDMAによる発がん性)が起きる可能性は低いだろうということですね。
なので、
病院や薬局にあるメトグルコ錠については、念のため回収するものの、すでに患者さんにお渡しした薬については回収しないことにしたとのことです。
もちろん、これまでメトグルコ錠に関して健康被害は報告されていません。
今回の自主回収は、健康被害が出る前の予防的処置の意味合いが強いです。
自己判断でメトグルコ錠を飲むのを中止すると、血糖値があがり、糖尿病が悪化するリスクがあります。
くれぐれも気をつけてくださいね。
でも、もしかしたら、ガンのリスクが高くなるかも・・・と思いながら、手元にある薬を飲み続けるのは、心と体に悪いですよね。
特に、メトグルコ錠は毎日飲まなければいけない大切な薬です。
自主回収となっていないメトグルコ錠の後発薬(メトホルミン塩酸塩錠MT「日医工」やメトホルミン塩酸塩錠MT三和など)もあるので、そちらに変更するのも一案です。
心配な場合は、まだ薬が残っていてもかかりつけ医を受診して相談しましょう!
不安なことは、医師や薬剤師に相談してスッキリしてくださいね!
さいごに:メトグルコ錠(メトホルミン製剤)自主回収、発がん性物質NDMA含む可能性
というわけで、
メトグルコ錠の自主回収について詳しくお話してきました。
今回、先発薬のメトグルコ錠250㎎と500㎎(大日本住友製薬)と後発薬のメトホルミン塩酸塩500㎎錠(日本ジェネリック)が自主回収となりました。
健康被害の報告などはありませんが、不安な方は他のメトホルミン製剤の後発薬に変更することも可能です。
「発がん性」という言葉だけで自己判断で飲むのをやめずに、必ず医師に相談してくださいね。