薬剤師の安美です。
この記事では、薬との飲み合わせに注意すべき薬草・ハーブであるセイヨウオトギリソウ(セントジョンズワート)含有の食品について解説しています。
爽健美茶や十六茶といった市販のブレンド茶に入っているかどうかについても、明確にしています!
ぜひ最後までお読みくださいね!
セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)とは?
セイヨウオトギリソウ(Hypericum perforatum)は、古くから薬草として利用されてきた植物です。
また、ハーブの世界では「セントジョンズワート」と呼ばれて有名です。
セイヨウオトギリソウは、さまざまな健康効果を持つことで知られています。
■抗うつ効果、更年期障害
セイヨウオトギリソウは、脳内のセロトニンやドーパミンといった「幸せホルモン」のレベルを調整し、気分を安定させるため、軽度から中等度のうつ病に対して効果があるとされています。*1
また、同様のはたらきから、更年期によくみられるイライラや抑うつ感にもよいと言われています。
■抗炎症効果
抗炎症作用や神経鎮痛作用があり、皮膚の炎症や傷の治癒、神経痛や筋肉痛の痛み改善に役立ちます。
セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)の相互作用
セイヨウオトギリソウは、いろいろな健康効果がありますが、薬との相互作用があるため飲み合わせに注意が必要です。
薬剤師の世界では、セントジョーンズワートとの相互作用は超常識です!
1. 抗うつ薬との相互作用
セイヨウオトギリソウ自体に、セロトニンやドーパミンを調整する働きがあるとされており、同じくセロトニンに影響する抗うつ薬と併用すると、セロトニン症候群という危険な状態を引き起こす可能性があります*1
セロトニン症候群は、過剰なセロトニンが脳に作用することで、混乱、発汗、震え、心拍数の増加などの症状を引き起こします。
抗うつ薬を服用している場合は、必ずセイヨウオトギリソウの使用の前に医師や薬剤師に相談するようにしましょう。
さらに、セイヨウオトギリソウは、肝臓の薬物代謝酵素であるチトクロームP450(CYP)、とくにCYP3A4やCYP1A2を誘導する(代謝酵素が増える→薬の代謝が促進される→濃度が下がる)ため、注意すべき薬がいくつもあります。
具体的に例をあげていきますね!
2. 経口避妊薬との相互作用
セイヨウオトギリソウとピル(経口避妊薬)を併用すると、ピルの効果を減少させる可能性があります。
セイヨウオトギリソウにより肝臓の代謝酵素(チトクロームP450:CYP3A4)を誘導されて、経口避妊薬の代謝が促進されて濃度が減少するからです。
すると、避妊効果が低下し、予期せぬ妊娠のリスクが高まります。
【セイヨウオトギリソウと飲み合わせが悪い主な経口避妊薬】
・オーソM-21、オーソ777-28
・トリキュラー21
・トライディオール21
・アンジュ28
・マーベロン28など
経口避妊薬を使用している場合は、セイヨウオトギリソウの摂取を避けるか、追加の避妊方法を検討することが推奨されます。
3. 抗凝固薬(ワーファリン)との相互作用
同じ作用で、セイヨウオトギリソウは、ワーファリンといった抗凝固薬(CYP3A4とCYP1A2で代謝)の効果を減少させる可能性があります。
4. 免疫抑制薬との相互作用
同じ作用で、セイヨウオトギリソウは、シクロスポリン、タクロリムスなど免疫抑制薬(CYP3A4で代謝)の効果を減少させることがあります。
5.喘息の薬(テオフィリン)との相互作用
同じ作用で、セイヨウオトギリソウは、気管支拡張薬であるテオフィリン(CYP1A2で代謝)の効果を減弱させる可能性があります。
ここに挙げた抗凝固薬や免疫抑制薬、気管支拡張薬を使用している場合は、セイヨウオトギリソウの使用を避けた方が安全です。
薬の効果が減ってしまうと、病状の悪化、命の危険にもかかわります。
6. その他の薬との相互作用
セイヨウオトギリソウは、他にも抗ウイルス薬(HIV)や抗がん剤、鎮痛剤といったいろいろな薬とも相互作用を起こすリスクがあります。
なので、服薬中でセイヨウオトギリソウを含む健康食品をとる場合には、医師か薬剤師に事前に相談するようにしてください。
もっと詳しく知りたいかたは、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構HPのこちらのページを参考にしてください。
表3 SJW(セントジョーンズワート=セイヨウオトギリソウ)含有食品との併用に関する注意を記載した医薬品に一覧表があります。
セイヨウオトギリソウ含有食品とは?
セイヨウオトギリソウは、その抗うつ効果を期待して、ハーブティーやお茶やサプリメントといった健康食品として販売されています。
日本の薬事法では、セイヨウオトギリソウは薬効を標榜しない「食品」扱いなので、「セイヨウオトギリソウ含有食品」となります。
セイヨウオトギリソウ含有食品は、前述したような薬との相互作用のリスクがあるので、表示や注意喚起などもされています。
セイヨウオトギリソウ含有食品には、
1.原料表示等により、セイヨウオトギリソウを含有していることを明示することが求められています。
2.説明文等により、医薬品を服用する人に対し、当該食品の摂取を控える旨等の表示を行うことが求められています。
〇原料表示等の例
セイヨウオトギリソウ
セイヨウオトギリソウ濃縮物
セント・ジョーンズ・ウォート
セント・ジョーンズ・ウォート濃縮物
セント・ジョーンズ・ワート
セント・ジョーンズ・ワート濃縮物
東京都健康安全研究センターHPより引用
私が調べた限りでは、ハーブティーやお茶、サプリメント以外にはセイヨウオトギリソウを含む食品などはみつかりませんでした。
ハーブティーやブレンド茶などには、複数の薬草・ハーブが使われることがあります。
爽健美茶や十六茶などにセイヨウオトギリソウが含まれているか、明らかにしたいと思います。
爽健美茶はセイヨウオトギリソウ含有か?
爽健美茶に含まれる成分は以下の通りです。
「爽健美茶」の原材料は、ハトムギ(ラオス、国産)、玄米(発芽玄米2%)、大麦、どくだみ、はぶ茶、チコリー、麦芽エキスパウダー、 月見草、ナンバンキビ、オオムギ若葉、明日葉、杜仲葉、ヨモギ/ビタミンC になります。
日本コカ・コーラHPより引用
セイヨウオトギリソウは含まれていませんね!
十六茶はセイヨウオトギリソウ含有か?
次に、十六茶の成分を確認してみましょう。
ハトムギ(タイ産、ラオス産、その他)、大麦、ハブ茶、発芽大麦、米、とうもろこし、びわの葉、たんぽぽの根、ごぼう、あわ、きび、柿の葉、ミカンの皮、小豆、ナツメ、ゆずの皮/ビタミンC
アサヒ飲料HPより引用
十六茶もセイヨウオトギリソウの記載はありませんね。
いろいろな薬草、お茶、植物がブレンドされていますが、爽健美茶も十六茶もセイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)は含まれていません!
安心してくださいね。
さいごに:セイヨウオトギリソウ含有食品は?爽健美茶や十六茶には入っている?
この記事では、抗うつや抗炎症作用をもつハーブ、セイヨウオトギリソウ(セントジョンズワート)について、薬との相互作用や含有食品に注目して解説しました。
セイヨウオトギリソウは、いろいろな薬との飲み合わせに注意が必要です。
セイヨウオトギリソウ含有の健康食品やお茶を選ぶ時には、表示を確認して、事前に医師や薬剤師に相談するようにしましょう。
なお、日常的に飲んでいる爽健美茶や十六茶にはセイヨウオトギリソウは含まれていないので安心してください!
参考サイト
*1厚生労働省eJIM:https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c04/43.html